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第24回教育を考える市民フォーラムに参加

子どもの貧困と教育格差を考える

 

 12月10日、ヒルズサンピア山形において第24回教育を考える市民フォーラムが開催され、関係団体と市民60名が参加しました。最初に、山形県労働者福祉協議会の鈴木正弘専務理事が開会の挨拶を述べ、連合山形副会長で山形県教職員組合の小口裕之執行委員長が主催者挨拶を述べました。

<小口裕之執行委員長の主催者挨拶>

 「子どもの貧困と教育格差を考える」と題したパネルディスカッションは、山形県高校障がい児学校教職員組合の佐藤克執行委員長をコーディネーターに、山形大の戸室健作准教授、労働者福祉中央協議会の山本幸司参与が基調報告を行い、参加者と意見交換しました。

 先ず、山形大の戸室健作准教授が「拡大する日本の貧困」と題して基調報告しました。

 戸室准教授は、自分の専門は社会政策論と紹介。社会政策論とは、「より良い就業環境をどうやって作っていけばいいのか、あるいは働くことができない場合の生活保障をどのように構築していくべきなのかについて考える学問」と解説しました。

 戸室准教授は、政府は一般的に「貧困率」を算出するとき、国民の所得を高い方から低い方へと並べ、その「中央値の半分未満の所得層」を「貧困」と呼ぶ「相対的貧困率」を用いている。しかし、今回は「生活保護の収入以下で暮らしている世帯」を「貧困層」と考え、貧困率を算出した。その結果、貧困世帯数は1992年の385万世帯から2012年には986万世帯に増加。貧困率も1992年の9.2%、から12012年には8.3%に増加した。都道府県別のワーキングプア世帯は1992年の133万世帯から2012年には320万世帯へ、ワーキングプア率は同じ期間に4.0%から9.7%に増大している。

 18歳未満の子どものいる貧困世帯は1992年の70万世帯から2012年は146万世帯へ、子どもの貧困率は同じ期間に5.4%から13.8%に増大している。2012年の「子どもの貧困率」は、高い順に沖縄(37.5%)、大阪(21.8%)、鹿児島(20.6%)、福岡(19.9%)、北海道(19.7%)と続く。子どもの貧困率急増の原因は何なのか。現在労働者の約4割が非正規労働者。子育て世帯は就労世帯でもあるため、賃金の低下が子どもの貧困に直接関係する。つまり、「子どもの貧困」の増加は、子育て世代での非正規労働者の割合が増えたことが原因だ。

 貧困をなくすためには、3つの取り組みが必要だ。一つは労働法制の改正、非正規労働者の規制強化や最賃法の増額。二つ目は社会保障の拡充、生活保護制度の抜本改革や最低保証年金制度の創設。三つめは、教育環境の整備、大学の授業料無償化や給付型奨学金の創設である。労働運動、福祉運動、教育運動などが共同して取り組み事が大切だ。

 ワーキングプアの存在は、労働市場において正社員の働き方を引き下げる錘の役割を果たす。ワーキングプアの活用が広がることは、そのコスト面と競争させられることによって正社員の労働条件を低下させる。賃金の引き下げや、さらなる長時間労働が正社員に負わされる。長時間労働の広がりは、労働市場において働く機会の縮小をもたらすので、そのことがワーキングプアの増大に拍車をかける。つまり、正社員の労働条件の悪化とワーキングプアの増大は相互促進的な関係にある。そうであれば、ワーキングプアの解消を図ることは、ワーキングプアの生活を強いられている人々だけでなく、正社員として働く人々にとっても大いに求められる。

<パネラーの山本さんと戸室さん> <コーディネーターの佐藤さん>

 次に、労働者福祉中央協議会の山本幸司参与が、「持続可能な安心の社会のために、世代を超えて若者支援・奨学金制度改善の必要性」と題して基調報告しました。

 山本幸司参与は、日本社会は社会として成立する要因を失いつつあるとして、①人口動態の劇的変化、②雇用・就労形態の構造変化、③家族機能の変化と低下、④政府のガバナビリティー劣化の4点を指摘しました。

① 人口動態の劇的変化では、1985年と2015年を比較すると、「0〜14歳」は2,604万人から1,617万人に987万人減、「65歳以上」は1,247万人から3,349万人に2,102万人増と劇的な変化が起きている。日本の公的年金制度は、いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるという「世代と世代の支え合い」という考え方を基本とした財政方式で運営されているが、もう既にこれは成立せず、「年金制度」は崩壊されつつある。

② 雇用・就労形態の構造変化では、1995年の日経連「新時代の日本的経営」での「雇用ポートフォリオ」の3類型で、「非正規・不安定雇用層」が導入され、中間層の解体と格差・貧困の固定化が構造化された。

③ 家族機能の変化と低下では、三世代世帯がモデル世帯とされていたが現在は6.5%。それに代わり単独世帯26.8%、夫婦のみの世帯23,6%、夫婦と未婚の子の世帯29.4%、一人親と未婚の子7.2%と構成が激変している。家族機能が低下しており、地域社会でこれをカバーできていない。

④ 政府のガバナビリティーの劣化では、フランスの例を挙げ、1995年に出生率が過去最低の1.65人に低下した時点で、各種の福祉制度や出産・育児優遇の税制を整備した。この政策の甲斐あって、フランスの出生率は2006年に欧州最高水準の2.01人にまで回復した。しかし、日本政府はいまだ抜本的な対策を打てていないと批判しました。

そして、「若者の貧困問題を何故放置できない」として7つの問題を提起しました。

(1) 急速に進行する少子化という人口動態は日本社会の持続可能性を脅かしている。結婚年齢にある若者たちの多くが希望しつつも結婚できず、子どもを育めない。若者の希望を実現する経済的社会的条件を整えることが最優先だ。

(2) 人口減少下の日本社会にとって「虎の子」といえる若者の20%近くが最低限の生活や教育の機会が奪われ、夢と希望を持って社会を支える人間として成長・活躍できる条件を保障できていない。このことは重大な社会的損失であり社会の持続可能性を脅かしている。

(3) 貧困は一部の例外的な人間の問題と捉えられていたが、いまや全ての若者が、いつでもだれでも当事者になりうる深刻な社会問題になっている。

(4) 事態の放置は当事者心理の荒廃、犯罪、家族崩壊等々、日本社会を深部から蝕む。

(5) 子どもたちの貧困は次世代へ受け継がれ、世代間連鎖と固定化をもたらし社会の流動性を奪い、活力を喪失させている。

(6) 社会保障制度(年金・医療・介護等)は賦課方式であることから若い世代の負担で支えられることを前提としており、少子・高齢化により支え手側の現役一人あたり負担割合は増大する一方、非正規雇用、低賃金等は現役世代の経済的社会的自立を困難にし、社会保障制度の基盤を崩壊させつつある。

(7) 諸外国に比べて教育への公的支出は著しく低く「受益者負担主義」政策により自己負担が重い結果、高等教育への進学率もOECD平均より10%程度低い。進学者の50%程度が奨学金という名の教育ローンを背負っておりアルバイト漬けによる学業生活の困難や高等教育を受けられる階層の固定化等により、中長期的に日本の産業・社会を支える「人的資源」の劣化をもたらす。

この後、参加者との意見交換が持たれました。参加者からは、今の日本社会の危機的な状況に対して危惧が出され、どう社会に発信していくのか、対策はどうすれば良いのかとの質問が出されました。山形大の戸室健作准教授、労働者福祉中央協議会の山本幸司参与からは、次のような助言がありました。

一つ目は、セーフティネットとしての労働組合の重要性が指摘されました。現在の「企業別」の労働組合の組織率は17.4%に低下している。これを「業種別」の労働組合に変えて、多くの未組織労働者を加入させる必要がある。「業種別」の労働組合は、その地域で働く正規・非正規を問わず、すべての労働者の人間らしい生活と労働を実現することを使命とする。

二つ目は、貧困問題の「自己責任論」からの脱却。貧困問題では、日本社会にはいたるところに分断線が入り込んでいる。分断線を消して、社会全体にとって何が必要で、何が大切かを考える「社会的責任論」で対応すれば、引きずり降ろす政治、犯人探しと袋叩きの政治に終止符を打てる。子どもの貧困の放置で生まれる社会的損失は40兆円に達するという試算もある。社会的な「投資の視点」で対策を打つべきである。

三つ目にまとめとして、近年あちこちで言われる、今だけ、カネだけ、自分だけ、これをよく3だけ主義と言う。今さえよければ先々のことを考えない、とにかくカネをもらえば何でも言うことを聞く、自分さえ良ければいいという考え方。そうではなく、「支え合い、助け合い、お互いさま」の考えで、個人責任でまかなえないものは社会的連帯で対応して行く、安心できる共生社会をつくっていこうと結びました。

最後に、山形県教職員組合の鹿間副執行委員長が閉会の挨拶を述べ、フォーラムを閉会しました。

 
 
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