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2017年・生協学校を開催

「小さな協同」の意義と協同組合の展望

広島大学大学院 田中秀樹教授が講演

 

 9月7日(木)14時30分より、山形国際ホテルで山形県生協連主催の2017年生協学校を開催しました。県内の各地より52名の参加がありました。

 山形県生協連の大友専務理事の開会の挨拶の後、さっそく講師の広島大学大学院田中秀樹教授より講演をいただきました。演題は「『小さな協同』の意義と協同組合の展望」です。冒頭田中氏は学生時代に鶴岡の灯油裁判などで2度ほど鶴岡市に来られたことがあり、学生時代から大学生協にかかわりご専門も協同組合についての研究をされている、と述べられました。

 田中氏はテーマを以下の3つに分けて講演されました。

  • 「小さな協同」はなぜ「小さい」のか?
  • 超高齢化社会と協同組合
  • 「小さい協同」と「大きな協同組合」の関係

1.「小さな協同」はなぜ「小さい」のか?

 「小さな協同」とは、福祉分野における助け合いの協同組織、農業生産場面における集落営農や集落型農業生産法人、また、新たな販売協同としての直売所など、1990年代頃から発展してきた新たな協同の取り組みやその諸組織を念頭においている。いずれもグローバル市場段階に入って、くらしの困難の質が変化したことを背景に登場した新たな協同組織である。こうした、生協、農協における1990年代前後から展開がみられる、福祉分野だけにとどまらない生活全般における助け合い活動の組織化は、いずれも協同組織であり、地域コミュニティに協同を育んでいるのが特徴である。

 これらは、グローバル市場の拡大・深化にともなう地域経済の空洞化や社会関係の個別化・孤立化、地域コミュニティの衰退、さらには高齢化の急速な進展を背景に現れた新たな協同諸組織である。そこでの協同は、旧い共同体の共同と異なり、人格的に自立した近代的個人間の結合であり、利害の共通性をベースにした結びつきとして始まり、個人間の相互承認により協同の内容を深化させ、地域にコミュニティ・ワークとして協働的関係をつくり上げることにより、地域コミュニティを補完し始めている。生協、農協といった「大きな協同」も、人格的に自立した近代的個人間の協同であるが、新たな「小さな協同」は、よりコミュニティ・ワークとしての特徴を強く持ち、地域コミュニティ形成に連続する。その理由は、協同が「小さい」ことに関わる。

 「小さな協同」は、なぜ「小さい」のだろうか? それは、「小さな協同」における労働対象が「大きな協同」と異なるからである。労働対象の違いは、協同の範囲や規模、さらには協同の特徴の違いをもたらす。

 農協、生協においては、民間企業との競争を背景に、合併による大規模化が進み、農協では1県1農協、生協では県域を越えた合併が現れてきた。農協・生協が「大きな協同」となるのは、商品を販売する、もしくは商品購買の協同であったからである。大規模化は、世界的にみると、協同組合内部での協同実態の衰退から協同組合であることの否定、すなわち「会社化」へとつながり始めている。

 「小さな協同」については、まず、福祉分野についてみれば、その労働対象は人間であり、対人サービス労働である。例えば、介護や世話を中心に、生活全般の家事支援労働をケア・ワークと呼べば、介護や世話は明らかに人間を直接の労働対象とする。支援しているのは、料理や掃除そのものではなく、介護を必要している者の自立しようとする力であり、「生きる力への援助」である。ケア・ワークは、人間という一回限りの生の個別性・独自性に向き合いながら、要介護者との、あるいはケア・ワーカー同士の協働関係として、地域に協同=共同体を網の目のように育んでいく。それが要介護者「自身の社会・家庭」となる。こうした「固有名詞の関係」が尊重される協同は、その範囲も規模も小さくならざるを得ないだろう。

 このような「小さな協同」が現れ始めたのは、1990年代前後からであり、それは高齢化、個別化・孤立化、グローバル市場化という、三つの進展と深く関わっている。

2.超高齢社会と協同組合

  まず、高齢化であるが、現在は人口構造が変化し、高齢者が人口の多くを占めるという、人類史上かつてない状況を迎えている。わが国の高齢化率は26.7%(2015年)で、すでに人口の4分の1が高齢者となっており、今後さらに高齢化が進むと予測されている。

 そもそも高齢期とは、「成長期」「生殖期」に続く、生殖を終えた後の「後生殖期」にあたる。高齢化社会とは、人間の歴史の進化の帰結として「後生殖期が普遍化する社会」であり、それは文字通り際立って「人間的」な社会、あるいは人間が本来もつポテンシャルが真に「発見」される社会であり、人類史、いや生命史の到達点というべきステージとしてとらえられる社会と思われる。さらに、後生殖期(老年期)においては、生物としてのヒトの生理的機能が可逆的に£瘟コしていくこと自体は避けられない。したがって、高齢社会とは、自ずと「障害が普遍化する社会」でもある。こうして「障害」そして「ケア」ということが、高齢化社会では中心的なコンセプトになる。

 介護保険制度は、要介護者の生活困難のうち、サービス基準にあう範囲に限定して制度対象とし、しかも家事介護ではなく身体介護中心に編成された「作業単位化した行為の集積」としての介護であり、要介護者のニーズに対応するには「限界」がある。それ故、介護保険の外側の助け合いや独自の福祉事業を配置する必要がある。

 生協や農協がこのケアの事業を行う上では事業的にどうかというポイントになるが、すでに生協で介護、たすけあいの事業を行っているところは介護保険の改悪により経営的に厳しくなっている。これは、介護保険制度の改正により介護報酬が居宅介護支援から地域密着型サービスに誘導されている事が原因である。

 こうした流れの中で介護事業を経営的に成立させるため農協や生協が取り組む福祉事業としてJAあづみ・たすけあいの会、そして福祉クラブ生協の例を紹介する。

 長野県のJAあづみ・たすけあいの会は1986年に婦人部世代別編成(ふたば会、みつば会、よつば会)により発足し1990年に「よつば会」たすけあい制度としてスタート。2000年からは訪問介護事業をスタート。そして現在NPO法人としてJAから自立している。仕事は居宅型介護サービスから有償在宅サービスができるようにしている事が経営的に成立させている。

 横浜市にある、福祉クラブ生協は介護事業をワーカーズコレクティブと連携して行っている。まず福祉クラブ生協の共同購入は目的が異なる。消費財の共同購入を事業の柱にすえるが、消費財の配達は安否確認と買い物支援が主目的であり、配達消費財のあるなしに関わらず訪問する。安否を確認し他の福祉サービスへとつなぐ入り口にあたり、買い物を入り口とし、組合員の「困りごと」を聞き取り他の福祉ニーズを把握するアンテナの役割を持つ。家事支援の一環としての買い物の協同形態、つまり買い物支援の協同形態である。

3.「小さい協同」と「大きな協同組合」の関係

 「大きな協同組合」である農協・生協は、大規模化する中で、次第に地域から離れつつあるが、「小さな協同」をその内部に、あるいは周辺に生み出し、その自立化と自主運営を図り、その支援を行うことにより、再度、地域との関係を強め、協同の実態を内部化することが可能である。

 「小さな協同」は、地域の中での社会関係を豊かにし、衰退する地域コミュニティを再建し始めている。例えば、ケア・ワークの関係蓄積機能はすでにふれたが、ケアの対象である個人が、健康と自立を求める主体としての個人であり、それを身近で支える家族があり、それを地域のボランティアや専門家の労働が支援するという、地域でくらす個人を主体とした労働の重層的で協働的な関係が成立するのが、ケア協同の特徴である。

 組合員のくらしの中では、買い物や農産物の出荷販売という行為は、社会との窓口、社会との接点であり、それはくらしの中の家事育児や介護、生産労働とつながっている。つまり、購買・販売協同は大きな包摂的協同となりうるが、その背後のくらしの労働と連続している。

 農協や生協が、地域で活性化しつつある新たな「小さな協同」との積極的連携、さらには新たな協同を積極的に生み出していく戦略をとれば、農協や生協内部の協同を活性化させ、ひいては新たな協同組合像を結ぶことになる。

 最後に、たすけあいの会の現状はその多くが組織で会員の減少が起こっており、特に協力会員の高齢化による減少がみられる。こうした中で、たすけあいの会の発展的な形態として「小さな協同」の組織形態がある。これは生協や農協の大きな協同の組織内にあるたすけあいの会等の「小さな協同」を大きな協同である生協や農協を社会関係資本として土台に、各種の外部の組織や行政とも連携して高齢者を点ではなく面で支えることができる。そして買い物支援や家事支援など地域の高齢者に寄り添う協同組合を目指すべである、と述べられて全体のまとめをされました。

 講演終了後、参加者との質疑応答を行い、閉会の挨拶を高橋力県連理事が述べました。参加者からは以下のような感想が寄せられました。

  • これまで規模の拡大が生協の発展とイコールとしてやってきました。結果事業規模の拡大はしましたが、人とのつがなりであるはずの協同の部分がよわくなっているのも事実だと思います。生協のとりくむべき大きな役割は地域社会の高齢化への対応だと思います。そのため「小さな協同」の意義をとらえなおして組織活動を組み立てなければならないと思いました。
  • 現在3名の組合員の班構成で共同購入を週次で行っています。まわりには共同購入活動に参加していない組合員も何人かいます。それでまだ自分で購入活動をされておられますが一人暮らしの方が増えた場合、今日のお話のように支援が必要な方も出てくるとおもいますので、今日のお話は大変参考になりました。相手に適した支援ができればと考えています。
  • 買い物協同から買い物支援協同への移行が高齢化社会にとって必要だろうという先生のお話、共立社でも見守りや、御用聞き、たすけあい等やれる事から始めているように思います。先生のおっしゃる買い物支援協同へ移行する為の仕組みの組み換え等今後考えていくためにも安定経営の下、共同購入の人員配置や高齢者向けコースの新設等、やれる事からやり、大きな仕組みの組み換えにつなげられればと考えさせられた講演でした。ありがとうございます。
  • 自分は共同購入の仕事をしていますが、現状でも高齢者の組合員加入が増えています。お話にありましたが高齢の方が利用しやすいように高齢者向けの注文書を作成し「困りごとがあれば書いてください」と事業所で行ったのは良いと思いました。自分のところでもできることがあれば取り組んでいきたいです。
 
 
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